第50回椙山フォーラム(視聴期間2023年12月8日(金)~18日(月)、オンデマンド映像配信にて)を開催しました。
2021年、2022年の人間講座で「人間と動物の関係の諸相」を取り上げてきました。今年度は、椙山フォーラムとして、愛知淑徳大学交流文化学部の二文字屋脩准教授を講師としてお迎えし、「野生動物をめぐるディスコミュニケーション―名古屋都市圏近郊部にみる害獣駆除の現場から」と題して講演をいただき、人間と動物の関係について取りまとめました。
講師は、長久手市の有害駆除隊員(猟師)としての活動経験から、獣害は自然とのディスコミュニケーションによって生じているとした上で、害獣駆除の難しさについて話しました。
まず、獣害の問題は、農作物被害、人身被害、家屋被害、生態系被害があり、人間が野生動物の住処に足を踏み入れることによって起きる被害もありますが、主に、野生動物が人間の住処に足を踏み入れることによって起こる被害であると説明しました。
獣害の背景としては、高度経済成長期に起きた社会変化によって耕作放置地が増加したことや里山の衰退により野生動物の新たな住処が増えたこと、狩猟圧の低下、気候変動により野生動物が増加したことが要因であるとし、この頃では都市近郊部まで被害が及ぶようになったということです。しかし、害獣駆除については、中山間部地域と都市圏近郊部、さらに各自治体により状況が異なり、駆除対象となる動物の種類、猟の方法、猟友会の問題、駆除に対する住民の反応などの違いもあり、さまざまな難しさがあるということです。
最後に、人間側のディスコミュニケーションをどのように乗り越えていくかについては、行政に猟師と市民との仲立ちをしてもらうことで、獣害を含む地域社会が抱える課題について議論ができるのではないかとし、その上で人間中心主義とも言える私たちのあり方についても問いたいとまとめました。
講演後は、今回の講演内容について、竹ノ下祐二中部学院大学教授、松浦直毅本学人間関係学部准教授、五百部裕本学人間関係学部教授の三名からのコメントがあり、最後に杉藤重信主任研究員を含めた五名による総合討論を行いました。