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◆2023-09-22
第3回人間講座を開催しました。

9月9日(土)、第3回人間講座を開催しました。井上達夫東京大学名誉教授を講師としてお迎えし、「コロナ禍の法哲学―危機管理と法の支配」と題して講演いただきました。

講師は、「危機管理と法の支配を両立させることは難しい問題ですが、絶対にやらなければならないことです。しかし、日本ではそもそも危機管理や法の支配が理解されておらず、福島第一原発事故では、危機管理概念の欠損が明らかになりました。さらに、コロナ禍においてもこの欠陥が改善されていないことが、国の対応を見ていてもよくわかります」と述べました。そこで、コロナの対応について具体的な事実を挙げながら説明しました。 

危機管理とは何かについては、「日本では危機管理のことをリスク管理と言っている人がほとんどですが、両者は根本的に異なります。ここで前提になるのが、リスクと不確実性の区別です。リスクとは予測可能・計算可能な損害で、不確実性は予測不能・計算不能な偶発性による事故災厄。不確実性が重大な危害として現実化する事態が危機です。そして、リスク管理の破綻を完全に回避するのは不可能で、リスク管理の破綻に対処するのが危機管理であるため、必ず併せて考えなければいけません。しかし、リスク管理要員が期待損失最小化原理に基づいて「ありうる事故」へのルーティーン化された対応を求められるのに対し、危機管理要員は「ありえないはずの事故」が起こった場合に最悪被害最小化原理に基づき果断に決断し行動することを求められるので、リスク管理機関・危機管理機関・事後的検証機関を峻別し分業と相互的チェックを図る組織体制が必要です」と説明しました。 

そして、「法の支配について最低限の定義は、公権力は法によって授権されたことしかできないということです。専制国家は、危機管理を口実に強権発動して法の支配を蹂躙(じゅうりん)する。日本は願望思考に浸って危機を直視せず危機管理をさぼり続けながら法の支配も蹂躙するという、<危機管理能力なき無法国家>といえるのです」と話しました。

 最後に講師は、「まともに責任を取る人たちが統治機構にはいない。科学者など専門家も堕落・偏見の罠に陥ることがあり、彼ら間に鋭い意見の対立もある。われわれ自身が異なった意見・情報を比較検討して主体的に考えなければ日本は危ない」と、まとめました。

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