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◆2023-08-03
第2回人間講座を開催しました。

7月22日(土)、第2回人間講座を開催しました。東京大学大学院人文社会系研究科 死生学・応用倫理センターの堀江宗正(ほりえのりちか)教授を講師としてお迎えし、「環境徳倫理から見た田中正造―エコロジカルな人格はどのように形成されるか」と題して講演いただきました。

足尾銅山鉱毒事件とは、近代日本初の公害事件です。栃木県の足尾銅山の開発により川に流された鉱毒(重金属汚染)が周辺環境に影響を与えましたが、政府や企業は加害を認めませんでした。公害被害が続く中、政治家の田中正造は批判と運動を展開し、国会では解決ができないと議員辞職をし、天皇への直訴を試みましたが、失敗に終わりました。
当時は、田中正造に同調し、自分の命をかけて天皇に直訴した義人としてたたえられましたが、中には「被害を受けた方が仕方ないと思えば問題も解消されるのに、田中正造が被害者をそそのかして抵抗運動をしているので自分たちが窮地に追い込まれている」と、住民間でも分断がおこりました。
その後、原発など公害事件が起こるたびに、田中正造と鉱毒事件は引き合いに出されますが、環境リスクは特定の人種・民族・階級に押し付けられ、環境問題以外の不正義や差別が解消されない限り環境不正義は繰り返されています。

倫理学の中に徳倫理があります。これは共同体主義とも関係があり、徳とは人や動物がそれぞれもっている機能を十分に発揮されている状態をいいます。
環境徳倫理とは、実際の環境の中で理想的な人間の在り方を追求する従来の哲学的倫理学、心理学、環境問題の学際的な領域として作られています。

田中正造は、「先人たちから受けた人としての徳を個人が養い、普遍的な自然に根差した人の生き方を常に考えて行動していく中で、より良い解決方法を模索し、共同で探求していくという理想的で道徳的な共同体を目指していく。それは、道とか徳とかは無形なもので、自然の中に宿っていることで、初めて自由というものが成り立つことが道徳である。今のわれわれの状況は苦難の状況だが、苦難を共にする中で幸福を思い描いていく」と、説いています。

最後に講師は、大切なのは永遠や不変なものを常に自分の身において自覚し、それにしたがって生きていく。これが幼い頃からの環境思想として命の倫理を完成することができるのではないかとまとめられました。

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