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◆2022-06-06
第1回人間講座を開催しました。

2022年度第1回人間講座(視聴期間2022年5月20日(金)~29日(日)、オンデマンド映像配信にて)を開催しました。


今年度の人間講座ではシリーズとして"動物園を考える"を開催いたします。第1回目は、京都大学名誉教授の湯本貴和氏を講師として「なぜ、いま動物園なのか?」と題して、その歴史と役割の変遷から講演をいただき、多くの方に視聴していただきました。


湯本氏
は植物生態学者ですが、2020年からの「新たな京都市動物園構想」を検討する京都市の委員会で座長を2年間務めたこともあり、「動物園には、どういう意義があり、これからどういう役割を担っていくのか」を動物園関係者と一緒に考えていこうと思ったそうです。


まず、動物園の歴史を紐解くと、
1752年にオーストリアのシェーンブルン宮殿で「メナジェリー」という見せ物小屋のような施設を作り、一般に公開したことが始まりです。それから発展して、1828年にロンドン動物学協会がロンドンに動物園を開園しました。もともとは「Zoologischer Garten:動物学の庭」という意味でしたが、頭だけをとって「ZOO」、つまり今に続く動物園を指す言葉のもとになったとされています。


動物園の展示は、檻のなかに動物を入れた方式が古典的ですが、檻や柵に閉じ込めておくのではなく、深い堀で囲って一見、自然状態に見えるハーゲンベック方法や、アフリカや東南アジアなどの生息域をそれぞれイメージして、できるだけ自然を再現したような生態展示、さらには動物の生息地に行ったような気分に没入できるイマ―ジョン型展示と、さまざまな改良が重ねられてきました。


動物福祉の観点からみると「環境エンリッチメント」、日本語でいうと「動物福祉のための環
境づくり」という概念が導入されました。動物園という限られた空間の中ではありますが、動物のストレスをなるべく軽減する環境を設定していく試みが世界中で行われています。野生状態でその動物が食べる行動を再現できるように給餌したり、発情や換毛時期も野生に近くなるように環境や食べ物を変動させたりして、動物のメンタルも含めた健康を野生状態に近づけて、同じ場所をうろうろと歩き回るような常同行動が起こらないように、あるいはストレスで自らを傷つける自傷行動がなくなるような工夫をしています。


動物園が希少動物を人工的に増殖させる場として
役立てられるのかという問題もありますが、湯本氏は、希少動物のみならず知的な動物もふつうの動物も一生を狭い空間に閉じ込めて動物の権利を奪うことが許されるのか、映像やバーチャルリアリティーでは代用できない「実物」にどういう価値があるというのかをもう一度考えなくてはいけないと思うようになり、究極的には「動物園は存在し続けられるのか?」「存在し続けるべきなのか?」いうことを一緒に考えたいとまとめられました。


湯本氏は2022年度第2~第4回人間講座にコメンテーターとしてお迎えする予定です。


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