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◆2021-08-30
2021年度第2回人間講座を開催しました。

79日(金)~18日(日)、NPO法人オオタカ保護基金代表、日本野鳥の会の理事長の遠藤孝一氏を講師にお迎えし、令和3年度第2回人間講座「使って、遊んで、里山を守る-サシバの里自然学校の実践-」をオンデマンドにより開催し、多くの方にご視聴いただきました。

遠藤氏は、中学生の頃から野鳥の会の会員で、東京湾の干潟などで渡り鳥を見て楽しんでいました。昭和40年代の高度成長時代、開発のために埋め立てられる干潟を見て「開発を止め、人と生き物が共存できる社会を作ることができないか」と考えていた時、オオタカに出会い、オオタカが人と自然の共存を具体化するのに良いテーマであると思ったことから、研究と保護に取り組みます。オオタカのような猛禽類を保護するということは、健全な生態系を守るということに繋がるとのことです。

遠藤氏は、オオタカの調査で栃木県宇都宮市からほど近い市貝町に行く機会があり、市貝町の素晴らしさに魅了されました。市貝町には森林があり、森林の中に田んぼがあり、そこでは農林業が営まれています。生き物にとって楽園のような環境で、タカの一種であるサシバの生息密度の高さは日本一です。さらに遠藤氏は、素晴らしい里山を有する市貝町の自然を残しながら、人も元気にする地域づくりを目指し、「サシバが舞う里地里山を基盤に環境と経済を好循環させ、次世代につなぐ」というコンセプトで「サシバの里づくり」を提案し、人と自然の共存を実践するため、遠藤氏自身市貝町に引っ越し「サシバの里自然学校」を始めました。

「サシバの里自然学校」は、ワシやタカの保護のためのNPO法人オオタカ保護基金の環境教育施設という位置づけで、「里山の管理再生」「自然体験や農業体験の提供」「地域や都市と農村の人の交流」の3つをコンセプトに運営されています。

「里山の管理再生」は、本講座のタイトル「使って」「守る」で言うと、例えば、田んぼを作ることは「使う」ことになり、田んぼを作ることでできた環境は生き物が暮らしやすくなるので「守る」ことになります。活動していく上では収益性も大切で、田んぼでできたお米や里山の木で作った、茶道で使われる菊炭の販売もしています。

「自然体験や農業体験の提供」はタイトルの「遊ぶ」ということになりますが、市貝町の里山でしかできない活動をしています。具体的には里山で野遊びしながら生き物と触れ合う「子ども生きもの塾」、田植えや稲刈りなど里山の暮らしを体験する「農的暮らし講座」、古民家に泊まる「宿泊キャンプ」、日帰りで遊べる「野遊び学校」などがあります。

「地域や都市と農村の人の交流」は、グリーンツーリズム、自然体験、農業体験の提供、農家や民家の縁側でお茶を飲みながら地元の人との交流などのイベントを行っており、時にグリーンツーリズム参加者は5年で10倍になっています。

また、市貝町では現在サシバをはじめ、多様な動植物を育む豊かな里地里山を守りながら、人と自然が調和した環境を作っていこうという内容の「市貝町里地里山保全条例」を制作中とのことです。2019年には繁殖地、中継地、越冬地と行ったり来たりするサシバを保護するための国際的な取り組み、「国際サシバサミット」が開催されました。

最後に遠藤氏は、自然学校のような場所がまず地域の保全活動の拠点となり、そこで自然保護活動をしながら、地域活動もするというような暮らし方、生き方ができる人を増やすことも大切であり、さらにこのような活動を広げていきたいとまとめられました。

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「写真提供:オオタカ保護基金」

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