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◆2021-06-22
2021年度第1回人間講座を開催しました。

5月14日(金)~16日(土)、京都大学霊長類研究所所長の湯本貴和氏を講師にお迎えし、令和3年度第1回人間講座「日本列島に動物と人間の歴史をさぐる」をオンデマンドにより開催し、多くの方にご視聴いただきました。

湯本氏はまず日本列島が縄文時代以降一貫して人口密度が高く、人間が徹底的に自然に関与したにも関わらず、生物多様性のホットスポットになっているのは、近代以前から生物資源を枯渇させないような里山での人間の活動によるものだとお話しされました。里山というのは、人間が農業や牧畜、狩猟採集などで生態系サービス(自然の恵み)を得るために自然を改変して作ったもので、日本の原風景でもあります。この生態系サービスには生態系が生産するモノ(財)、食料、水、燃料、繊維、化学物資、遺伝資源などの「供給サービス」、生態系のプロセスの制御により得られる利益、気候・病気・洪水の制御、川の汚染物質の無毒化などの「調整サービス」、さらに生態系から得られる非物質的利益、例えばレクリエーション、発想、教育などの「文化サービス」、そして他の生態系サービスを支えるサービスとして、土壌形成、栄養塩の循環、植物の光合成そのものなどの「基盤サービス」があると説明されました。

また湯本氏は日本の自然の変遷について説明を続けられました。もともと日本には原生的な自然が多くありましたが、都ができ、寺院や家の建築のために大量の木材を伐採した結果、山は禿げ山となり、また開墾をしたことで動物との接触が増え、獣害が起こりました。戦乱の時代になると土木技術の発達や都市建設などで、木材資源の略奪が起こり、明治維新以降は国際戦争で北方に出兵するための毛皮が必要となったので哺乳類の乱獲が起きました。さらに戦後は燃料・材料革命により里山での仕事がなくなり、人が住まなくなった結果、里山が荒廃していったようです。

このように、近代以前の日本における人と自然の関係を見てみると幾度か危機がありましたが、日本は山岳地帯が中心にあり、島もあるので人間の力が及ばないところが残っています。さらに治山治水、禁猟禁伐といった政策や宗教的な聖地という保護区もあったので、豊かな生物多様性はある程度は回復してきました。しかし、高度な都市化や耕作の放棄などにより、里山に適した動植物の住処がなくなってきていることから、自然と人間の関係についていろいろな工夫をし、動物との共存を考えていかなければならないと湯本氏はまとめられました。

湯本先生.jpg里山写真.jpg

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