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◆2021-01-12
第42回椙山フォーラム開催報告

124日(金)~6日(日)に椙山人間学研究センター主催の第42回椙山フォーラム『「ダイエット」を歴史と文化から再考する』をオンデマンドによる映像配信で開催し、多くの方にご視聴いただきました。

1部では、独立研究者の磯野真穂氏に「痩せたい気持ちの文化人類学」と題してご講演いただきました。

磯野氏は、「ダイエット」を例に挙げ、人が比較の上で何かを変えようとするのは、背景に何らかの価値観があること、あらゆる民族は、危険から身を守るために入れ墨をいれたり、大人になるために「スカ―」という傷を身体に入れたり、纏足(てんそく)をするなど、身体に何らかの手を入れ、痛みをともなう「身体変工」をするということ、その理由として、私たちが他者との差異の中に存在していて、他者と違う私というのが私を存在させているという事実が前提としてあると説明されました。そして差異について、フランスの哲学者ボードリヤールが言った「差異化の欲望」という言葉をあげ、「隣にいる人よりも、あるいは過去の自分よりも優れていたいという、私たちのこころの奥底にある欲望」というものを私たちは持っており、その意味で、身体の外見を一切気にしないことや、痩せたいという気持ちを捨てることは難しく、私たちは他者の目線を内面化して生きていて、それから外れるということはとても難しいとお話されました。

また「ダイエット」に関連して排泄の話となり、第2部のコメンテーターである湯澤氏の著書をもとに、排泄は、単に汚いものを排出するだけではなく、いろいろな形でとらえられ、食べることと直結し、自己管理が求められると説明されました。

2部では、磯野氏の講演に対し、法政大学人間環境学部教授の湯澤規子氏が、ダイエットの語源が「生き方」であるという磯野氏の話から、社会的、あるいは歴史的に広い視野で考える必要があること、資本主義社会になって「差異化の欲望」が膨張し、「身体変工」が自分の身体をコントロールすることにつながっていることや、こうあるべきという規範と私たちの身体は深く結びついているなどとお話され、「他者の視線」と「規範」は国によって、歴史と文化によって異なり、相対的なものとして考える必要があるのではとコメントされました。

第3部では、湯澤氏のコメントを踏まえ、椙山人間学研究センター主任研究員、人間関係学部教授の杉藤重信氏も参加し、講演者、コメンテーターの3人により、SDGsや野外排泄、ダイエット、脱毛、整形を例に挙げ、他者との「差異化」「同化」について活発な意見交換が行われ、盛況のうちにフォーラムが終了しました。

3人の写真.jpg

(左から、磯野真穂氏、湯澤規子氏、杉藤重信氏)

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