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◆2020-12-09
2020年度第3回人間講座を開催しました。

1030日(金)~111日(日)、法政大学人間環境学部教授の湯澤規子氏を講師にお迎えし、令和2年度第3回人間講座『食べること、はたらくこと、生きること-日米比較社会史から考える「私」の物語』をオンデマンドにより開催し、多くの方にご視聴いただきました。

湯澤氏は、まず、「はたらくこと」について次のようにお話されました。学生時代、地理学科のフィールドワークで埼玉県の「秩父銘仙」の織物の調査に行った際、ある高齢女性に出会い、今まで読んだ本には書いていなかった地域の歴史や織物の話を聞き、感動したことがきっかけで、女性が働くことについて考え始めました。さらに、銚子の漁村の海女の方や、都市近郊の行商の女性などに聞き取り調査をして、彼女たちが「生活」と「労働」を分けずに働き、日本の女性の就業率を表わすグラフのように20代から30代では結婚、出産、子育てのため、いったん仕事をやめ、それらが落ち着いてからパートなどで仕事に戻るといったような「M字曲線」にならない場合があるということがわかりました。この調査から「女は家で働き、男は外で働く」という社会規範は、一つの事例にすぎず、時代や産業、地域によって違うということが見えてきたと説明されました。

次に、「食べること」について、働く女性がどんなものを食べていたのか愛知県の一宮の織物工場などを例に挙げ、女工といえば貧しいというイメージがあるかもしれませんが、昼食は工場の食堂でとり、メニューは当時の献立表の記録によると、大盛りご飯に具沢山の味噌汁、季節の野菜というようにしっかりと食べて働いていました。その一方、男性の昼食は外食が多く、男女に違いがあったこともわかります。100年前は「生活」と「労働」を分けずに働いていたのですが、工場ができ、都市化が進んで一部の人たちが「生活」と「労働」を分けるようになると、食とくらしが再編成され、男性が働き、女性がくらしを担うという規範ができてきたと説明されました。

そして、「はたらくこと」「食べること」のまとめとして「生きること」について話されました。ここではアメリカのボストンの工場で働く女性たちの文集「Lowell Offering」を取り上げ、彼女たちが「Cultivation of Humanity」(人格を磨く)という言葉を使い、自分自身を励まし、働くことの意味づけをしていたこと、また女性が女性に向けて励ましのメッセージを送っている作文があること、さらに女性が食べていくだけではなく、地位向上を目指すために設立された「Woman's Educational and Industrial UnionWEIU)」という組合では、移民女性の支援や女性労働者の胃袋のケア、法律の支援、雇用訓練など、行政の仕事のようなことを女性たちが行い、このような「女性が女性のために」という動きは日本にはなかったと説明されました。

最後に、日本は労働に重きがおかれ、生活が労働を支えているのですが、アメリカは生活の中に労働があり、そもそも「生きること」への向き合い方が違うのではないかと気づき、女性がどう働くべきか、どう生きるべきかというある種の思い込みや規範のようなものは普遍的ではなく、一つのモデルかもしれないと説明されました。

そして日本やアメリカなど家族の構造の違いを捉え、『あなたはこれからどんな「私」の物語、これに続く「社会と私」の物語を描いていきたいですか?』と問いかけまとめとされました。

顔写真(法政:湯澤規子).jpgイラスト.jpg

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