12月10日(木)、平成27年度第4回人間講座(人間論シリーズ3 人は社会的動物である 『災害が露わにする"社会の本質"』)を開催しました。
講師は、名古屋大学大学院環境学研究科教授の黒田由彦先生です。黒田講師は地域社会学を専門に、近年は東日本大震災を対象とした被災地域の復興過程や支援の問題に取り組んでいます。
最初に黒田講師は、人間の社会は実に多様で、融和・協力する良い社会もあれば、敵対・闘争する悪い社会もあり、どうすれば良い社会がつくれるのかを知ることが"社会の本質"を知ることであると話しました。また、普段はあまり見えない"社会の本質"が大規模災害の際に露わになると述べ、東日本大震災で見えた社会の本質を三つの局面から解説しました。
三つの局面の一つ目、土台となるのが「秩序(緊急対応)」です。震災が発生した直後、現場では暴動も略奪も起きず、コンビニに人々が並ぶ姿は世界を驚かせました。黒田講師は、「秩序」の背後には、互いにゆずりあう精神と、根拠を問わない相互の「信頼」が成立していると説明しました。
二つ目の局面は「協力(復興)」です。黒田講師は、地域の組織や住民のグループや行政など、様々な利害関係の背後で相互の「信頼」が成立しているかどうかで、復興の進み具合が大きく違ってくると述べました。そして、ここでも互いにゆずるべき所はゆずる精神が大切であると話しました。また、実際に復興への素早い動きを見せた、女川町の様子を写真で紹介しました。
三つめの局面は「共感(支援)」です。福島第一原発事故の後、被曝からの自主避難をサポートする市民活動が全国で自然発生的に生まれました。その背後には、「避難してくる人達が必ずいるだろう」「その人達を支えなければ」といった「お互い様」意識があると、黒田講師は解説しました。
最後に黒田講師は、「信頼・互酬性」が社会を良くするために非常に大事であり、「利害計算」だけに目を向けるのではなく、どのように信頼関係や相互扶助関係をつくっていくべきかを考えていかなければならないとまとめました。