7月7日(月)、平成26年度第2回人間講座『手記で読む望月カズの生涯──「韓国孤児の母」となった日本人女性の話──』を開催しました。
講師は、本学文化情報学部准教授の樋口謙一郎先生です。樋口講師は東アジア地域研究・言語政策研究を専門に、最近では韓国の英語教育政策・多文化主義政策のほか、コリアンのグローバルな移動とコミュニケーションの様相に関する研究をしています。
始めに樋口講師は、公共図書館で望月カズの手記『この子らを見捨てられない』を見つけたことがカズについて知るきっかけであったことを話したうえで、カズに関するさまざまな手記をもとに、終戦前の生い立ち、孤児を育てるきっかけともなった、朝鮮戦争中の男児の救済時の状況、その後、133人もの孤児を育てた苦悩の道のりについて紹介しました。戦後の貧しい生活の中、女手一つで子供達を育てることは並大抵のことではなく、時には韓国赤十字社に自分の血液を売って生計を立てたエピソードにも触れました。
このような苦悩の連続の中、カズの心の支えになったのは、積極的に家事手伝いをしてくれる子供達の存在であり、どんなに貧しくても子供達を引き取ったカズの根底には、自身も苦難の道を歩んだ孤児であり、幼い頃に死に別れた両親への深い思いがあったのであろうと述べました。また、反日感情の強い韓国において、カズを理解し協力・支援した韓国人もたくさんおり、カズの手記にはそういった人達からの親切や世話の様子、そして感謝の念が率直に綴られていることを話しました。
最後に樋口講師は、韓国では、1980年代でも口減らしや未婚女性の子どもという理由で、海外養子となる方が存在しており、カズはそのような海外養子や孤児問題といった社会状況の中、孤軍奮闘した人物でもあり、そのような切り口から考えることも大事ではないかとまとめました。
次回の人間講座は9月下旬から10月中旬の開催を予定しています。
詳細は順次ホームページで掲載いたしますので、皆様のご参加を心よりお待ちしております。