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◆2019-10-15
令和元年度第3回人間講座を開催しました

 9月19日(木)、岐阜県美術館学芸員の廣江泰孝氏を講師として、令和元年度第3回人間講座「美とは何事か、その在処を探る」を開催し、69名に参加いただきました。
 廣江氏は、最初に「美意識」について2つのエピソードを用いて話されました。1つは阪神・淡路大震災の際にレスキューに行ったが、自分たちの力では全く人命救助ができなかったこと、そして救助を待つ人のそばで美術品を守る作業をしていた時に「自分たちが守ろうとしているのは何か」と疑問を感じ、そうまでして守りたい文化とは何か、問うきっかけとなったことです。もう1つは、危篤状態の人が、最期の願いということで、夜中に入院先の病院から美術館に、亡き夫との思い出の絵を見に来たのですが、真剣な眼差しで作品を見つめ話し始めたその姿から、美術とは人に生きる力をもたらす存在であること、また人それぞれ異なる接し方があり、作品との関係性は一様でないということを考えさせられたことです。この2つの出来事は、廣江氏の学芸員人生を決定づけるものとなりました。「美」とは人の心に深く突き刺さる言葉であり、その時の光景です。また「美の正体」というのは、心が感じて動いた状態、つまり感動であり、それは色あせることなく、永遠に記憶されるものだと説明しました。
 続いて、岐阜県美術館の活動の紹介があり、美術館は作品を見るだけではなく、人が集う場所であることから、環境作りに力を入れていること、絵を時代様式に合わせてルーヴル美術館のように壁一面に飾り立てるなど、いろいろと展示の方法を工夫していること、その他作品の修復や保存に関することなど様々な事例を示しました。美術館はものを収集する、調査研究する、展示公開する、保存する、この四つの活動から成り立っており、美術館を介していろいろなものを見ていくと、その先に美にまつわる物語を見つけることができると話しました。
 「美」とはすぐそこにあるが、なかなか見つけることができない。それは感動するという心の問題であることから、心を研ぎ澄ましていくことが大切であり、そうすることで想像する力が拡がっていきます。この想像する力が生きていく力であり、その力の源が美の在処です。廣江氏は最後に「美とは何事か。それは自分自身を探るということである。」と説明し、結びとしました。

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