Sugiyama 椙山女学園

椙山女学園 椙山人間学研究センター

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◆2018-01-26
平成29年度第4回人間講座開催報告

1月12日(金)、人間関係学部教授で椙山人間学研究センター主任研究員の杉藤重信氏を講師として、平成29年度第4回人間講座「微生物と人間:文化人類学から考える」が開催され、53名が参加しました。
杉藤氏は、フィールドワークを中心としたミクロネシアの物質文化研究をもとに、地球上の生物で最も個体数の多い微生物と、人間との共生関係を「文化人類学」の視点から考える試みを紹介されました。
人類は数千年に渡り、季節に応じた多種多様な地元の食材を食してきましたが、農業の開始やスーパーマーケットの普及により食材バリエーションを減らす結果となり、そのことが様々な成人病につながった可能性が指摘されています。また、微生物が作り出す抗生物質の発見により、感染症による死亡率を下げ、世界人口の急増をもたらしましたが、人口増加により農業への依存度を高め、抗生物質の利用増加による腸内細菌の減少や耐性菌の出現といった負の側面も現れました。
杉藤氏は、これら人為的な環境の変化が加速している現代を考える時、ミクロネシアのエラート島民の生態が、サンゴ礁という地理的条件から環境に大きく依存している例として現代にも通じる貴重なサンプルになるとして紹介されました。エラート島の人々は、非常に限られた食材資源で暮らしていますが、アルコール酵母によるヤシ酒造り、酢酸菌によるヤシ酢造り、燻製と発酵による保存食作りと、微生物を利用し多様な食生活を営んでいます。また、医療環境の乏しさから抗生物質の使用は限定的と考えられ、島民の腸内細菌と我々のものとの差を調べることは、生活様式の多様性を示す上でも重要であると述べられました。
微生物と人間とはこれからも共生を続けていく関係であることから、杉藤氏は微生物学や生理学などと連携した「微生物人類学」や、従来の生態人類学を微生物に拡張した「微生物文化人類学」など新たな研究分野が、環境教育や多様性教育にも貢献していくことを示唆され、今後は日本の発酵食品を対象に研究を発展させていくことを結びとされました。

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