Sugiyama 椙山女学園

椙山女学園 椙山人間学研究センター

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◆2017-01-12
椙山女学園創立111周年記念「ヒト・人・ひと」椙山フォーラム『人間性の起源とゆくえ:霊長類学と臨床哲学の対話』を開催しました

 12月10日(土)に椙山女学園創立111周年記念椙山フォーラムを開催し、355名の方々にご参加いただきました。今回のフォーラムでは、京都大学総長である山極壽一氏、大阪大学大学院文学研究科教授である浜渦辰二氏を講師に、中部学院大学准教授の竹ノ下祐二氏、本学人間関係学部准教授の三浦隆宏氏をコメンテーターにお迎えしました。
 第一部の講演では、初めに山極氏が「サル化する人間社会」と題して講演しました。「サル、類人猿、ヒトの特徴を通じて人間性の由来をお話したい」と切り出した山極氏は、人間のコミュニケーションは、類人猿と共通である「対面交渉」から始まり、食や子育ての共同という人間特有の行動を経て、相手の気持ちを理解しようとする“同調”“共感”が生まれ、相手の行動の意味を読みとる能力につながり、言語が生まれたのではないかと解説しました。
 次に浜渦氏が、「ケアの臨床哲学〜生老病死の現場から〜」と題して講演しました。まず、ネアンデルタール人が仲間の死を悼む心を持っていたことを紹介し、古代ギリシア人の死の認識や仏教用語である「生老病死」について説明を加えました。さらに、現代社会の中で「生」と「死」が医療化されている点について触れました。また、苦しむヒト(Homo Patiens)、ケアするヒト(Homo Curans)という用語に触れ、人間の人間たる所以を「ケアすること」に見ようとする人間観について話しました。
 第二部のコメントでは、三浦氏が、山極氏に対して、人間社会の格差の拡大、家族崩壊の危機、同性愛をキーワードにコメントを行いました。ルームシェアなど「他人」と暮らす若者の現状を例に、人間性の涵養に資する点があるのか疑問を呈し、さらに生殖医療等、人間だけが持つ技術の考え方についての問いをなげかけました。次に竹ノ下氏が、浜渦氏へのコメントとして、本来、進化の産物であった「生老病死」を医療化することは、手を差し伸べる側が他人の苦を支配し、管理しようとしていることではないかと指摘。人類が進化史の中で獲得したのは手を差し伸べるというケアであるが、「ただ見守る」というケアが根源ではないかとその理由を語りました。
 第三部のパネルディスカッションでは、本来見返りを求めない行為であるはずのケアがビジネス化している現状など、特にケアに焦点をあてた議論が行われました。人間性の特徴のひとつとして、未来について考えるため「死」を苦しいと感じるのではないかとの見解が示され、さらに、対面コミュニケーションが人間性と深くつながっていると考えられるのではないかとまとめられました。

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