Sugiyama 椙山女学園

椙山女学園 椙山人間学研究センター

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◆2015-09-03
平成27年度第2回人間講座を開催しました

7月27日(月)、平成27年度第2回人間講座(人間論シリーズ1 人間は、言語によってのみ人間である『物語はどのように理解されるか』)を開催しました。
講師は、本学人間関係学部教授の増井透先生です。増井講師は認知心理学、認知神経心理学を専門に、記憶に関する認知神経心理学的研究や、認知症にともなう記憶障害の研究などを行っています。
最初に増井講師は、私達は普段、膨大な情報の中から必要な情報を選択し、そこに意味を見つけることで物事を理解していると話しました。そして、物事を理解するために行う情報処理の方法の一つに「トップダウン処理」があることを説明しました。
トップダウン処理とは、事前に人間が持っている知識・経験をもとに情報処理を行う方法で、このトップダウン処理を起動させる、私達の持つ知識の枠組み・単位を「スキーマ」と呼びます。
増井講師はスキーマについて、いくつかの実験例を挙げ、説明しました。例えば、ある抽象的な絵(図1)を人に見せ、長い時間が経ってから、その絵を描いてもらうように言います。すると、猫のことが潜在意識にある人の場合、猫のスキーマが働き、猫の絵(図2)を描くという実験結果となりました。この結果から増井講師は、人間の記憶は「どのようなスキーマを用いたか」によって変わってしまうと説明しました。
次に増井講師は、私達が物語を理解する際にも、スキーマが大きく働くと解説しました。私達は文章の細かいところまで読まなくても、スキーマが働けば理解を成立させることができます。例えば、スキーマの一種に「スクリプト」というものがあり、これは「習慣的な行動に関する知識」のことを指します。増井講師はスクリプトによって、一部の情報しか与えられていなくても、何が起こったかが推理できることを説明しました。
また、スキーマは記憶の変容を起こすことがあるものの、物事を効率よく理解する上で非常に重要なものであると話しました。
最後に増井講師は、私達が読んで理解している物語は、個々の文章の集まりではなく、スキーマが意味をつくりだし、記憶をガイドし、理解を促進させているとまとめました。

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